薬剤師の職場において、人材育成と継続的な学習は切っても切り離せないテーマです。新人の指導と同時に、現場で働くすべてのスタッフが学び続ける環境を整えることで、チーム全体の成長と安定につながります。しかし、育成に偏ると既存スタッフの成長機会が減り、学習ばかりを強調しても新人が置き去りになる可能性があります。学びと育成の両立を意識した運営は、離職率の低下やサービスの質向上にもつながる重要な視点です。この記事では、育成と学習を無理なく両立させながら、全員が主体的に成長できる職場運営の工夫を3つに分けて紹介します。
育成の基本は現場での実践(OJT)ですが、それだけでは定着しにくいため、意識的な振り返りの時間を設けることが大切です。たとえば、1日の終わりに5分でも「今日は何を学んだか」「どこで困ったか」を言語化させることで、新人自身の理解も深まり、指導者側も成長の過程を把握しやすくなります。
また、週ごとの進捗チェックや月単位での面談など、区切りを設けて習熟度を確認する仕組みがあると、育成の質も安定します。OJTを単なる現場任せにしない工夫が、継続的な育成につながります。
経験の浅いスタッフでも、安心して質問や相談ができる空気感も重要です。メモやチェックリストの活用も、自信の積み重ねを支える仕掛けになります。
新人育成に注力するあまり、ベテランスタッフの学びが疎かになるケースもありますが、全員の成長を意識することが職場の活性化には不可欠です。たとえば、新人向けの勉強会をベテランが担当するだけでなく、専門性の深掘りやチームマネジメントに関する学びの場を用意することで、誰にとっても「学び続ける職場」になります。
経験年数に応じた役割や課題を設けることで、漫然と過ごすことなく目的意識を持ちやすくなります。育成の中に成長機会を組み込む視点が重要です。ベテランが学び続ける姿は、後輩たちへの良い刺激にもなります。
教育の提供側も学びの主役になれる仕組みが、継続の鍵を握ります。
個人が学んだ内容をチームに還元する文化がある職場は、育成と学習が自然と循環します。たとえば、学会参加後に報告会を開く、勉強会の内容をチーム内で共有する、日常業務の中で気づいた改善点を全体にフィードバックするなど、学びのアウトプットを仕組みにしておくことで、情報の定着と共有が促進されます。
このような文化がある職場では、新人も「学びを伝える側」になれるため、育成と学習の垣根がなくなり、誰もが成長の主役になれる環境が育ちます。相互に刺激を与え合えることが、持続可能な成長チームの原動力となります。
共有の習慣があるだけで、学習の質が大きく変わります。個々の学びがチームの力になるという意識が根づくことが理想です。